ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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Part.2 

2010-04-12UP

奨学金・教育ローンの可能性−A
国の教育ローン


企画・構成:田中俊亘(教育ジャーナリスト)

シリーズ 11
公的奨学金と教育ローンの活用で探る
『自立進学の可能性』

Part.1
日本学生支援機構の奨学金制度

Part.2
日本政策金融公庫の国の教育ローン

Part.3 自立進学シミュレーション

Part.3−@
〔1〕大学在学中にかかる費用

Part.3ーA
〔2〕タイプ別シミュレーション


シリーズ 10
『〜教育力が問われる入試制度〜AO入試』

Part.1−@
プロローグ 前編

Part.1−A
プロローグ 後編


シリーズ 9
『専門学校の実力』

Part.1
データで分析する専門学校の現状

Part.2
専門学校の就職支援
綿密な就職指導や授業で学生をサポート

Part.3
専門学校の就学支援
奨学金など多彩な制度で学びを支える

Part.4
インタビュー
東京都専修学校各種学校協会



シリーズ 8
『魅力ある短期大学づくり』

Part.1
インタビュー
日本私立短期大学協会に聞く

Part.2 事例研究

Part.2−@
学生のキャリア意識形成を全力で支援
【埼玉女子短期大学】

Part.2−A
学ぶ喜びを体感できる新カリキュラム
【東京農業大学短期大学部】


シリーズ 7
『自立進学の可能性』(2010年・改訂版)

Part.1
プロローグ

Part.2 奨学金・教育ローンの可能性

Part.2−@
日本学生支援機構の奨学金

Part.2−A
国の教育ローン

Part.2ーB
大学の支援制度

Part.3
自立進学シミュレーション

※この記事は、2010年3月末現在のデータで掲載しています。最新版はこちらをご覧ください。

 進学や就学にまつわる費用を借入で賄う場合、奨学金のほかに「教育ローン」を利用する手がある。前回の日本学生支援機構の奨学金制度に続き、今回は教育ローンを概観する。


入学前に必要な
初年度納入金


 奨学金の代表格ともいえる日本学生支援機構の奨学金は、一般に「貸与」といわれる。しかし、「貸与」は同機構を主体とした表現であり、利用者にとっては、いずれ返済しなければならない「借入」と変わりはない。まして、貸与条件がゆるやか(成績条件なし、保護者の所得上限が高い)で、貸与金額の幅も広い(3〜12万円)第二種には、返済時に利息が加算される。返済がはじまってからの基本的な仕組みは、借り入れたお金に利子をのせ、分割して返していく教育ローンと同じだ。ちなみに、ローンは、その一方の主体者である金融機関の表現では「融資」ということになる。

 奨学金制度と教育ローンの違いは、必要なお金が、いつ、どのように利用者にわたるかに絞って考えるとわかりやすい。日本学生支援機構の奨学金は月々にわけて貸与される。対して教育ローンは一括して融資される。

 返済計画については後に詳しく見つめる必要があるが、奨学金を利用すれば、親がかりでない「自立進学」の可能性が大きく広がることは前回見た通りだ。しかし、奨学金の貸与は入学後にスタートする。その意味では、奨学金は進学支援というよりも、就学支援といった方が実情に近い。

 このとき、ネックとなるのが入学前に納入を求められる入学金や授業料だ。国立大学が、入学金と授業料で81万7,800円。私立大学の場合は入学金、授業料に加えて施設設備費等が必要で、日本私立学校振興・共済事業団の調べによると、2008年度の文科系平均が122万4,361円、理科系平均が154万2,822円。ほとんどの大学が前・後期の分割納入を認めているとはいえ、入学前に、これくらいの資金が必要となることは知っておかなければならない。

 その前期分の納入期限は合格発表から間もなくやってくる。日本学生支援機構には、30万円を増額して一括貸与する「入学時特別増額貸与奨学金制度」があるが、それも入学後の貸与であるため、入学前に支払う初年度納金としては使えない。

2009年8月3日より借入金の上限が
300万円に増額


 入学初年度の学費調達には、特に期限を決めずに申請を受け付けている教育ローンが役に立つ。

 教育ローンは、ほとんどの民間銀行や、JA、労働金庫、また、「国の教育ローン」といわれる日本政策金融公庫(以下・公庫)による貸付制度がある。

 融資上限額は民間の場合が300〜500万円、公庫が現行(2010年2月現在)300万円。いずれも初年度納入金程度なら十分に賄うことができる。

 民間と公庫では金利や貸付を受ける保護者の年収制限が異なる。金利は民間よりも公庫の方が低め。労金などには公庫よりも有利な金利も設定されるが、会員・非会員によって条件が異なる。

 また、保護者の年収については、民間が、たとえば「200万円以上の年収があること」と、最低金額を制限しているのに対して、公庫は「790万円以内」と、逆に上限を設けている(図表@参照)。民間にとってローンは商品であり、公庫にとっては制度。その違いといえるだろう。

 後の返済をなるべく少なくするためにも、借入はできるだけ少なくしなければならない。自立進学をめざして教育ローンを利用する場合は、300万円を上限とする国の教育ローンで十分だ。

 国の教育ローンを利用できるのは進学者の保護者に限られる。その意味では親がかりでない自立進学の対象とはならないが、在学期間中は元金の返済を据え置くことも可能であるため、保護者と連携すれば、卒業後に本人が返すこともできる。ただし、据え置き期間中であっても金利だけは返済しなければならない。

 仮に、2月1日に80万円を借り入れて国立大学に進学。返済期間を10年に設定して、在学中の4年間は金利だけを支払い、4年後から6年間で元金を返済した場合のシミュレーションは次のようになる。

 在学中の金利返済月額=1,766円
 4年後からの返済月額=1万2,030円
 返済総額=95万928円
 ※金利は2010年3月10日現在の固定金利・年2.65%で設定

 在学中の金利返済、4年後からの月返済とも、十分に可能と考えられる金額だ。

 教育ローンの金利相当分を、在学中に限って奨学金などとして補給する大学や地方自治体もある。こういった制度を利用できるなら、先の月額金利1,766円×4年分=84,768円は不要だ。

 ちなみに、国の教育ローンは保証人なしでも借り入れできるが、その場合は(財)教育資金融資保証基金の保証が必要となり、年1.0%に相当する保証料を求められる。先のシミュレーション通りなら、その額は5万7,850円。もちろん、連帯保証人1人を立てることができれば、保証料は必要ない。申し込みから借入が決まるまで、通常10日程度だ。

 国の教育ローンの相談・申し込みは、公庫の各支店ほか、民間の金融機関でも受け付けている。また、公庫のホームページ(http://www.k.jfc.go.jp/)からオンラインで申し込むこともできる。

 次回は、自立進学の可能性を広げる、大学の制度を概観する。


■日本学生支援機構
http://www.jasso.go.jp/


図表-1 「国の教育ローン」の世帯年収上限額