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私たちが何気なく過ごしている日常には思わぬ危険が潜んでいる。災害、事故、病気などは、いつ誰の身に起きても不思議ではない。そうした危険から人間や社会を守るしくみ、危険を回避したり適切な対処をしたりするための危機管理についてさまざまな研究が進められている。
危機管理の研究に取り組んでいる東京理科大学総合研究機構の危機管理・安全科学研究部門において、主に人間の健康危機管理を研究している板生清先生を訪ね、ネイチャーインタフェイスの基本的な考え方と研究成果について教えて頂いた。最終回となる今回は、もうひとつの研究テーマ「ネッククーラー」の開発と、ウェアラブル技術の今後の展開について伺うことにしよう。
熱中症の危機を回避する
ネッククーラーを実用化
板生先生は、ウェアラブルという発想を直接的に健康危機管理につなげるものとして、夏の熱中症対策や節電対策などに役立つ「ネッククーラー」の開発と実用化にも取り組んでいる。
「ネッククーラーは、首にU字型の冷却ベルトを巻き付け、頸動脈を冷やすことによって血液、そして脳や身体全体を冷やすものです。
ベルトにはペルチェ素子のパネルを3枚貼り付けています。ペルチェ素子というのは、電流を流すと片側の面からもう一方の面に熱を移動させる働きがある半導体です。この性質を利用して首側の熱をパネルの外側に移動させ、その熱を腰につける水冷式ラジエーターを通じて外部に逃がすことによって首を冷やすしくみです。ラジエーターを制御することでペルチェ素子の温度を調節することもできます。
健康危機が叫ばれ、とくに夏は熱中症に気をつけなければいけませんが、ネッククーラーを身につけること(ウェアラブル)によって、自分で自分の健康危機を管理することができるのです」
ネッククーラーを開発することになったきっかけはいまから3年前、汗がかけない無汗症の子どもを持つ保護者の会から、シンポジウムで面識のあった板生先生に相談があったことだ。
「人間は汗をかくことによって気化熱で身体を冷やすのですが、汗をかかないとその機能が働きません。無汗症の方たちは、凍らせて使う保冷剤で身体を冷やしているのですが、保冷剤が溶けるまでの一定の時間しか使えません。そこで、私が研究している技術で身体を冷やす装置をつくることができないだろうかという相談があったのです」
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板生 清(いたお きよし) 1942年、東京都生まれ。'66年、東京大学工学部精密機械工学科卒業。'68年、同大学大学院精密機械工学専攻修士課程修了。同年、日本電信電話公社(現NTT)入社。副理事、記憶装置研究部長、研究企画部長などを歴任。'92年、中央大学理工学部精密機械工学科教授。'96年、東京大学大学院工学系研究科教授。'99年、同大学大学院新領域創成科学研究科教授。2004年、東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科教授・研究科長。'08年から同大学総合研究機構の危機管理・安全科学技術研究部門長も兼任。工学博士。NPO法人ウェアラブル環境ネット推進機構理事長。主な著書に『コンピュータを「着る」時代』(文春新書)『ウェアラブル・コンピュータとは何か』(NHKブックス)『情報マイクロシステム』(朝倉書店)などがある。
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