姿勢やジェスチャーの特徴を
国ごとに予測する方法を構築
2008年度は研究をさらに一歩進めて、コミュニケーション行動の特徴と文化的な特徴との相関関係を探り、そこから国によるコミュニケーション行動の違いをモデル化することに取り組んだ。
「文化的特徴については、ホフステードという人が世界50か国、7万人を対象に行った調査をもとに、各国の文化的特徴を5つの要素(*2参照)に分けて数値化したデータがあるので、それを使用しました。コミュニケーション行動の特徴は、前年度のビデオをあらためて分析し直して、数値化しました」
行動については、姿勢とジェスチャーの両方について調べた。回数で表せるものは数でカウント。姿勢やジェスチャーの継続時間は秒単位で計測。姿勢の変化の大きさや動きの硬さ(緊張しているかリラックスしているか)などは7段階評定で数値化した。
こうして得られた文化的特徴の数値とコミュニケーション行動の数値をもとに、「操作説明のためのヘルプエージェント」のところで触れたベイジアンネットワーク(*3参照)による行動予測モデルを作成した。
これは、国を指定すると、文化的特徴とコミュニケーション行動との相関関係から、会話中にどのような姿勢やジェスチャーをしやすいか予測することができるもの。日本とドイツについては、ほぼイメージどおりの予測結果になることが確認されていて、アメリカや韓国も、一般的に抱くイメージに近い予測結果になっているそうだ。
この研究はまだ進行中だが、中野先生はコンピュータを使った語学学習システムなどへの応用を考えている。たとえば、日本人がドイツ語を学習するとき、画面にドイツ人の先生のキャラクターが出てきて、言葉だけでなくドイツ人らしい姿勢やジェスチャーまで理解できるようなシステムが想定されている。
【用語解説】
*1 エージェント:情報科学、とくに人工知能の分野でよく使われる言葉。この言葉自体はもともと「代理人」とか「動作主」といった意味があるが、その両方の要素を持ち、人間とコンピュータの仲介役として自律的に動くのが会話エージェント。
*2 文化的特徴の5つの要素:@権力格差が意志決定に与える影響(目上の人の発言を尊重する傾向が強い、など)、A個人主義的か集団主義的か、B男性らしさが高い社会か女性らしさが高い社会か、C不確実なものを回避したがるか、D長期的志向か短期的志向か。
*3 ベイジアンネットワーク:人工知能の一種で、データ同士の相互の関係から、近い将来にどのようなことが起こる可能性が高いかを推論するシステム。中野先生の研究では、マウスの動きを基にユーザーの現在の状態を把握しながら近い将来の行動を予測し、適切な対話を行えるようにしていった。
《つづく》
(次回は「没入型環境におけるガイドエージェントについて」です)
■成蹊大学 理工学部
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