明らかになった体型特徴を基に
手作業でボディ4体を製作
このようにして、高齢者の体型特徴について代表的なパターンを探り、その体型特徴を備えた4体のボディをつくることになった。
ボディの製作は、4体それぞれの図面を描くことから始まった。人間工学研究センターのデータから4つのボディごとにバスト、ヒップ、背丈、背幅、胸幅など衣服設計にかかわる数値の平均値を求め、それにゆとり量を加えたサイズで正面図や側面図を作図していった。そして、この図面を見ながら製作をしていったが、当時はすべてが手づくりだった。
「図面を見ながら、発泡スチロールに芯材となる綿を貼り付けて形をつくっていきました。そのうえで芯材に被せる布を縫い、表面に貼って仕上げていきました。できたものは、図面どおりのサイズになっているか数値合わせをして確認し、綿の詰め方が悪かったり、布の縫い方が悪かったら修正を加えたりしました。原始的な作業だったので、すごく時間がかかりましたね」
芯材となる綿は固形化させるスプレーを吹き付けているが、ボディは立体裁断でピンを打てることが条件になるので、マネキンのように硬いものではない。
こうして4体の高齢者ボディが完成した。タイプ1のボディは、標準体型の7号と11号の2体。この2体はどちらも、頸部前傾(背がやや丸い)、背側部後湾(肩甲骨が前に湾曲)、腹部突出、腰部扁平(臀部のふくらみの消失)という体型特徴を備えている。
タイプ2のボディは、肥満体型17号。これは、タイプ1と同じ体型特徴を備えている。タイプ3のボディも肥満体型17号。これは、頸部前傾、背側部港湾、腹部突出、腰部突出という体型特徴を備えていて、タイプ1と2に比べると、腰部突出だけが異なっている。
このボディは、前述したように姿勢を含めた高齢者の体型特徴を備えていて、高齢者体型の約65%をカバーすることができるという。もともとは高齢者の衣服の研究を進める必要性から開発したものだが、それまで存在しなかったものをつくり上げたこと自体が大きな業績となった。
大塚先生の研究室では、その後も若い女性の脚のボディ、ウォーキングウエア用のボディ、後述するおむつ用のボディをはじめさまざまなボディを開発し、現在は高齢者の全身ボディの開発にも取り組んでいる。これは大塚先生が「衣服の設計製作の根本はボディづくり」と考えているからだ。
現在は研究室に身体の3次元形状を10秒で計測できる装置があり、そのデータを基に外部の業者が発泡スチロールを自動的にカットしてボディをつくることもできるようになっている。
《つづく》
(次回は「高齢者ファッションショーについて」です。)