ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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第15回 Part.1

2010-03-29UP

風力など新エネルギー導入促進の技術を探る(1)
〜期待される新エネルギーの導入〜


工学院大学 工学部電気システム工学科
荒井 純一研究室

第17回
ウェアラブル技術で健康危機管理を実現
《東京理科大学 総合研究機構 危機管理・安全科学技術研究部門 板生清研究室》
Part.1

Part.2
Part.3
Part.4

第16回
「はやぶさ」が太陽系大航海時代の扉を開く
《宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所/月・惑星探査プログラムグループ》
Part.1

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Part.3
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第15回
風力など新エネルギー導入促進の技術を探る
《工学院大学 工学部電気システム工学科 荒井純一研究室》
Part.1

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第14回
体型分析を基に快適な衣服づくりを追求
《日本女子大学 家政学部被服学科 大塚美智子研究室》
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時代に適した経済や金融のあり方を探る
《慶應義塾大学 経済学部 池尾和人研究室》
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第12回
対話型コンピュータの実現をめざす
《成蹊大学 理工学部情報科学科 中野有紀子研究室》
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第11回
スポーツビジネスのあり方を科学的に考察
《早稲田大学 スポーツ科学学術院 原田宗彦研究室》
Part.1

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Part.5

第10回
ヒートアイランドや都市型強雨の実態を解明
《首都大学東京大学院 都市環境科学研究科  高橋日出男気候学研究室》
Part.1

Part.2
Part.3
Part.4


『新・研究室はオモシロイ』(全16回)
雑誌「ドリコムアイ」に掲載された記事をPDFファイルでご覧いただけます。

 地球温暖化対策は、いまや人類共通の課題だ。なかでもCO2(二酸化炭素)排出量が多い電力分野では、風力や太陽光などCO2 を出さない新エネルギーの導入が期待されている。

 そのため、たとえば風力発電の場合、海岸沿いやゆるやかな丘陵地などに巨大なプロペラを持つ発電塔が並んでいる光景をテレビや新聞などで目にすることも多くなった。とはいえ、風力発電の発電量は、まだごくわずかだといわれている。

 では、社会的な期待が大きいにもかかわらず、風力発電など新エネルギーの導入がそれほど進んでいないのはなぜだろうか? 

 その疑問の答えを探るため、今回は風力発電など新エネルギーを中心に電力の安定供給につながる技術を研究している工学院大学工学部電気システム工学科の荒井純一先生の研究室を訪ね、新エネルギーの導入が進んでいない理由、導入促進のための技術課題、その課題の解決をめざして取り組んでいる研究内容などについて話を伺うことにした。

CO2等の排出量25%削減には
新エネルギーの導入が不可欠


 荒井先生は、電力の発電・送電から消費までの電力システム全体を対象に、その安定的な運用を実現するための研究に取り組んでいる。現在は、従来型の電力システムの研究から風力発電や太陽光発電など新エネルギーにかかわる研究に軸足をシフトしているという。そこで、なぜ新エネルギーにかかわる研究をメインに据えることになったのか、そこから話を伺ってみた。

「いま、地球温暖化を防止するため、低炭素社会の実現が世界レベルの課題になっています。日本も国を挙げてこの課題に取り組んでいて、2020年までにCO2等の排出量を25%削減することを世界に表明しています。

 そうした社会的背景のなかで、電力分野においてもCO2の削減は非常に重要な課題になってきました。とくに、石炭や石油などを燃やす火力発電は直接的にCO2を排出するため、発電時にCO2を出さない自然エネルギーとして風力発電や太陽光発電を増やしていくことが社会的要請になっているのです。

 このうち風力発電については、日本各地に風力発電所がつくられ、まだ量は少ないのですが、風力発電事業者から電力会社に電力が供給されるようになっています。

 しかし、風力発電や太陽光発電を本格的に普及させていくためには、解決しなければならない技術的課題も多い。その課題を1つずつ解決し、新エネルギーの実用化を促進していくことは、電力にかかわる研究室の使命だと考えて研究に取り組んでいるのです」


▲荒井 純一 主任教授

風力などの新エネルギーは
発電量の変動がネック


 日本が世界に公約したCO2排出量の削減を実現するためには、風力発電や太陽光発電を増やしていかなければならない。そうした新エネルギーの本格的な実用化のために解決すべき技術課題とはどのようなものなのだろうか?

「風力発電も太陽光発電もクリーンで再生可能なエネルギーなのですが、自然現象に依存しているため、発電量の変動が大きいことがネックになっています。風力発電は、風が強く吹けば発電量が増え、風が弱まると発電量は減ってしまいます。太陽光発電も日射量に左右され、夜は発電できません。

 このように発電する電力の変動が大きいため、現在の電力システムといかにうまく組み合わせて使うかが、これからの課題になってきます。逆にいうと、その課題を解決することが本格的な実用化への道を開くことにつながるのです」

 荒井先生によると、風力発電や太陽光発電など新エネルギーと現在の電力システムとの組み合わせで問題になるのは、電圧や周波数の変動だという。

「現在の電力システムでは、電圧や周波数はほとんど一定に保たれています。もし、電圧や周波数が変動すると、たとえば工場で精密に製造されている製品に不具合が生じることがあります。さらに極端な変動があると、私たちが使っている電気製品が壊れることにもなりかねません。そこで、電力会社では電圧や周波数を一定に保つように一所懸命、制御しているのです。

 そういう電力システムのネットワークに、たとえば風力発電の電力が入ってくる。しかも、その電力量は変動が大きい。そうなると、電圧や周波数を制御することが難しくなり、変動してしまう可能性があります。したがって、風力発電の電力がたくさん入ってくるようになったときのために、電圧や周波数の変動を制御する方法を確立していかなければならないのです」

既存電力と組み合わせる技術を提案し
新エネルギーの普及促進をめざす


 では、そうした課題について大学の研究室にはどのようなことが期待されているのだろうか?
「風力発電事業者や電力会社の方の話を聞いても、やはり風力発電の電力を導入するときに、電圧や周波数の変動を抑える技術が求められていると思います。

 発電にかかわる現場では、もっと当面の課題、たとえば現在のシステムのなかでより安定的に電力を供給していくこととか、装置や機器の改良・改善などに取り組んでいます。もちろん、現場においても風力発電が増えたときの対応策は重要視されているのですが、いますぐ必要ということではなく少し先の課題になります。したがって、その部分については、原理的なことを含めて大学で研究が進むことに期待が寄せられているといえるでしょう」

 少し先の時代のニーズを先取りした研究ともいえそうだが、研究が進み風力発電を導入する際の技術課題を解決することができれば、風力発電自体がもっと拡大していく余地もあるということだろうか?

「日本の場合、発電量全体のなかで風力発電が占める比率はまだ1〜2%で、ヨーロッパやアメリカに比べるとかなり少ないのが実情です。そのぶん、まだまだ増えていく余地もあるのです。風力発電が現在の火力発電に取って代わることはないにしても、発電量全体の5〜6%ぐらいを占めるようになる可能性は十分にあると思います。

 ですから私は、風力発電導入の技術課題を検証し、現在の電力システムとうまく組み合わせて利用する方法を提案していくことが、風力発電自体の拡大や電力の安定的な供給、さらには地球環境問題への貢献につながると信じて研究を進めているのです」

 荒井先生の研究は現在、「風力発電」と「インバータ(直流を交流に換える装置)応用」が2本柱で、風力発電については「風力発電機を大量導入するための研究」と「風力発電の出力平準化の研究」に取り組んでいるそうだ。では、それぞれの研究について話を伺っていくことにしよう。


《つづく》
(次回は「風力発電機を大量導入するための電力会社の対策について」です。)



■工学院大学 工学部電気システム工学科
http://beams.cc.kogakuin.ac.jp/1c4/index.html