風力発電量の変化による
周波数の変動が問題に
電圧と周波数のうち、電圧については比較的制御しやすいため、大学の研究室に期待されている技術課題として、周波数の変動を制御することに焦点をあてているそうだ。
「周波数の変動は、クルマの走行にたとえるとわかりやすいかもしれませんね。クルマが平坦な道路を一定の速度で走っているとしましょう。それが上り坂にさしかかると、そのままではスピードが落ちるのでアクセルを踏む。下り坂になると加速してしまうのでアクセルを戻す。そうすることで一定のスピードに保つことができます。
電気でいうと、上り坂は昼間に電力消費が増える状態のことで、そのままだと周波数は下がります。下り坂は夜間に電力消費が減る状態のことで、そのままだと周波数は上がります。そのため、電力会社では電力消費が増えると発電量を増やし、電力消費が減ると発電量を減らすという制御をして、周波数を一定に保っています。それも過去のデータから翌日の電力消費量の推移を予測し、リアルタイムでも周波数の変動を検出しながら非常に緻密で精度の高い制御を行っているのです。
そういうシステムに風力発電の電力がたくさん入ってくる。しかも、その量は風速で変動する。これでは周波数の制御が難しくなります。実際に電力会社では、いまのシステムでは風力発電はこのくらいまでしか導入できません、ということをいっています。しかし、それでは世の中全体としてハッピーにならない。やはり、風力発電の導入量が増えても周波数の変動を制御できるようにして、風力発電量を増やしていくことが必要なのです」
広域から発電機1台まで
シミュレーションで検証
荒井先生は、このテーマを含めて研究手段としてはコンピュータによるシミュレーションを採用している。これには理由がある。まず、発電所などの現場で実験することはできないという制約がある。もう1つの理由は、電気回路の働きや電気の動きは基本的に数式で表すことができるということだ。たとえば、発電電力の変動が電圧や周波数にどのような影響をおよぼすかといった問題も、数式に数値を入れて計算すれば現実と同等の結果を求めることができる。つまり、シミュレーションは電力システムの研究をするうえで非常に有効な手段になるわけだ。
「このシミュレーションは、電力にかかわるさまざまな課題を探るため、関東地方や東日本といった広域的な電力ネットワークから発電機1台まで、テーマに応じた設定で研究を進めることができるようになっています。
現在は、さまざまなパターンのシミュレーションで、風力発電の導入による周波数の変動を明らかにしていきながら、その変動を制御する方法を探っている段階です」
では、制御する方法として、荒井先生はどのようなものを想定しているのだろうか?
「現時点では2つの方法を考えています。1つは、いまある発電機に少し手を加えるという方法です。発電機は、電力ネットワークの周波数を一定にするために、電力消費に応じて発電量をコントロールする制御機能を持っています。そこに、風力発電の電力による周波数の変動も制御できるような機能を追加するのです。これなら現在のものを少し変えればいいので、コストが安い。ただ、風の変動は速いため、風力発電の電力が大量に入ってきたとき、この方法で周波数を制御するのは難しい面もあると思います。そういう点も考慮しながら、シミュレーションによって実現の可能性を検証していきます。
もう1つは、新しい装置、たとえば電力貯蔵装置を使う方法です。風力発電で入ってくる電力が増えたときにはその電力を貯め、減ったときには電力を出す。そうすれば電力の変動自体が少なくなるので周波数の変動を抑えることができます。電力貯蔵装置として代表的なものはバッテリーですが、いまはまだコストが高い。それでも、電気自動車の普及などによって10年後ぐらいにはバッテリーのコストが安くなるでしょう。そうなるとこの方法は有効だと思います。
ただ、バッテリー以外にも電気を貯えることができるものがあり、それぞれに特性が異なります。そのなかでどれがいいのかということも含めて、さまざまな可能性をシミュレーションで探り、数値的な裏付けもしたうえで、よりよい方法を提案していきたいと考えています」
《つづく》
(次回は「風力発電の電力出力平準化の研究について」です。)