ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン

39-2

2010-03-01UP

若者はコミュニケーション力がないのか(2)


工藤 啓

53 同じ10代でも差異がある
53-1 〜将来のことは…何とかなります〜
53-2 〜社会をよくするために生きていきたい〜
52 非日常下の成長
52-1 〜漁船にて海上に出る〜
52-2 〜無人島に踏み出す〜
51 被災地貢献のカタチ
51-1 〜現地に行けない若者たち〜
51-2 〜東京から被災地を支援する〜

50 地域に若者の居場所はない
50-1 〜不審者と思われる日常〜
50-2 〜図書館を子ども・若者の居場所に〜
49 人前で話をするのが苦手
49-1 〜他者に迷惑をかけない〜
49-2 〜客観的な“できている”で変わる〜
48 セーフティーネットとしての高校
48-1 〜給食が唯一の栄養源〜
48-2 〜学力やキャリア支援だけではなく〜
47 地震のとき若者は
47-1 〜情報を届ける〜
47-2 〜情報を拡散する〜
46 再学プログラム
46-1 学び直し機会を創る(1)
46-2 学び直し機会を創る(2)

45 卒後生活への不安
45-1 〜故郷への愛情と東京への期待〜
45-2 〜未内定より不安なこと〜
44 学び直しの取り組み
44-1 〜学び直しのニーズ〜
44-2 〜学び直せる環境作り〜
43 未来を志す
43-1 〜目的ある進路決定〜
43-2 〜行動してから考える〜
42 自分と仕事の関係性
42-1 〜自分の仕事の捉え方〜
42-2 〜3つの「ワーク」〜
41 社会人になりたい
41-1 〜社会人と会社人〜
41-2 〜社会の一員になるには〜

40 自己肯定感の喪失
40-1 〜社会の役に立ちたい〜
40-2 〜自分は人から必要とされていない〜
39 若者はコミュニケーション力がないのか
39-1 若者はコミュニケーション力がないのか(1)
39-2 若者はコミュニケーション力がないのか(2)
38 大学生の就職不安
38-1 大学生の就職不安(1)
38-2 大学生の就職不安(2)
37 価値観は“ソーシャル”へ
37-1 価値観は“ソーシャル”へ(1)
37-2 価値観は“ソーシャル”へ(2)
36 仕事につながるナナメの関係
36-1 仕事につながるナナメの関係(1)
36-2 仕事につながるナナメの関係(2)

35 「働く」が難しい
35-1 「働く」が難しい(1)
35-2 「働く」が難しい(2)
34 就活スーツについて
34-1 就活スーツについて(1)
34-2 就活スーツについて(2)
33 地域の力で自己成長
33-1 地域の力で自己成長(1)
33-2 地域の力で自己成長(2)
32 中学4年生
32-1 中学4年生(1)
32-2 中学4年生(2)
31 若者の不安とひとのつながり
31-1 若者の不安とひとのつながり(1)
31-2 若者の不安とひとのつながり(2)



 大人が若者に“コミュニケーション力”の不足を嘆く一因は、そのプロセスとクロージングにあるのではないでしょうか。私が経験した例から考えてみたいと思います。

 以前、ある学生から相談を受けました。きっかけはゼミの教授が私と知り合いで、紹介を受けたからです。一通りの挨拶を済ませると、突然、「大学を休学して留学しようか悩んでいるんです。どうしたらよいでしょうか」と話されました。留学の悩み相談であることは事前に聞いていましたが、相手(学生)の状況も価値観もまったくわからない中では応答のしようがなく、困ってしまった経験があります。

 初めて出会うひとであったり、どなたかの紹介で話を伺いに訪れる場合など、本来の用件は互いに認識していても、当たり障りのないテーマから会話を始めたりします。短い時間の中で少しでも相手のことを知り、円滑にコミュニケーションを取る算段を取るわけですが、ここが省略されてしまうと会話がギクシャクします。

 そのことを学生に聞いてみたら、「工藤さんに無駄な時間を取らせたくなかった」と言います。こちらに気を使ってくれていたわけなのですが、案外、無駄と思えるプロセスがコミュニケーションを円滑にする重要な要素でもあります。

 携帯電話、E-mailなど、コミュニケーションツールの発達により、情報のやり取りがとても便利になりました。特にインターネットが当たり前の若い世代は、これらのツールを簡単に使いこなします。私もよく使い方を教えてもらっています。ただし、“コミュニケーション力”とツールの活用は別物です。その意味で、大人が若者に言いたいのはクロージングの部分なのではないかと思います。

 先方企業の担当者から、「あの件はどうなっているんだ」とお叱りを受けたことがあります。新規企画作成のための重要なデータ資料が届いてないと言います。私が若い職員に聞いたところ、「ずっと以前にメールで送りましたよ」と言います。先方企業担当者は届いてない、と言います。後で調べたところ、サーバートラブルの関係だったことがわかりました。

 相手にメールで資料を送るのはよいと思います。しかし、それに対する返信やリアクションがない場合、または、メールを送った翌日に一本電話をかけるだけでも確認はできたのです。メールを送ったごとに確認の電話をかけるのは迷惑ですが、重要な案件/資料などを送れば、通常は返信が来ます。それがなければ「何かトラブルがあったのかもしれないな」と考え、確認をするなりして、先方とスタートしたコミュニケーションをしっかりと閉じる(クロージングする)こともまた、“コミュニケーション力”の範囲なのです。

「若者はコミュニケーション力がないのか」という問いに対して、若者になくて、大人にはある、とは決して言えません。しかし、プロセスやクロージングについては失敗経験、教えてもらった経験の積み重ねが強く影響します。だからこそ、経験の少ない世代に対し、いまの若者は…、となるのかもしれません。



工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。

2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)