ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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第63回

2009-12-07UP

コミュニティビジネスの希望(前編)


久田 邦明

「生涯学習と地域のリーダー」
第83回 前編 / 第84回 後編
「情報の受け手の問題」

第81回 前編 / 第82回 後編
「カフェ・バッハのこと」
第79回 前編 / 第80回 後編
「青年団が教えてくれること」

第77回 前編 / 第78回 後編

「就活こそ若者の生涯学習」

第75回 前編 / 第76回 後編
「もう一つの社会について学ぶ」

第73回 前編 / 第74回 後編
「ホワイトキャンバスの10年」

第71回 前編 / 第72回 後編

「地域社会は再生する」

第69回 前編 / 第70回 後編
「講義について考えた」

第67回 前編 / 第68回 後編
「大学をユースセンターへ」

第65回 前編 / 第66回 後編

「コミュニティビジネスの希望」

第63回 前編 / 第64回 後編
「青少年施策を考える」

第61回 前編 / 第62回 後編
「大学生はコンビニで高齢者と出会う」

第59回 前編 / 第60回 後編

「ピアサポート委員会の活動」

第57回 前編 / 第58回 後編
「子どもがいる暮らしの支援」

第55回 前編 / 第56回 後編
「若者の地元志向」

第53回 前編 / 第54回 後編

「高校生世代という捉え方」

第51回 前編 / 第52回 後編
「地域で子どもを育てるスポーツ少年団」

第49回 前編 / 第50回 後編
「子どもの貧困」

第47回 前編 / 第48回 後編

「地域の声は、届かない」

第45回 前編 / 第46回 後編
「大学は難しい」

第43回 前編 / 第44回 後編
「子どものころ、世話になった大人」

第41回 前編 / 第42回 後編

 『風呂屋が地域を再生する』(草隆社)という100頁ほどの手づくりの風合いの本を読んだ。銭湯経営の喜怒哀楽が十二章、口絵の写真に、小学生の体験入浴感想文も掲載されている。著者の北橋節男さんは神奈川県藤沢市、小田急線六会日大前駅の栄湯湘南館三代目。二男四女の父親は、銭湯を「地域のコミュニティを作る社交場」と形容する。

 これこそがコミュニティビジネスではないかと、わたしは感心した。「人間の行動は人力で動ける範囲だと納得する。だから銭湯も、大型化して商圏を広げるのではなく、近所の掘り起こしと対象年齢の拡大が一番だと思うのだ」。グローバル経済の時代に、このように述べて地元で稼いで暮らす事業主の気概を読者に伝えてくれる。

 家庭風呂が当たり前になった今日、湯を沸かして番台に座っているだけではいられない。経営努力というのか、創意工夫が求められる。コインランドリーを置き、カラオケ、マッサージもおこなっている。最近始めたそろばん塾の塾長は北橋さんだ。銭湯寄席を「義父の知り合いの息子がプロの落語家」という縁で始めたというエピソードには地縁血縁に頼る地道な事業拡大の工夫が分かる。

 「自営業の素晴らしいところは、平日の昼間に動いて用件をこなすことができるところだ」という。自治会と商店会の役員として祭りや盆踊りで活躍し、小学校PTAと中学校PTAの会長をつとめて、おやじの会を立ち上げた(小学校は父親限定を避けて親の会とした)。現在は、学校・家庭・地域の各団体が連携する「学園都市むつあい協力者会議」の会長を引き受けている。

 小学生の体験入浴や中学生の職場体験の受け入れには、これらの地域活動が背景にあるわけだが、それだけでなく「将来の客層に食い込んでいくことが大事」というところがいかにもコミュニティビジネスらしく、好ましい。

 風呂屋のおやじは、Tシャツにジーパンでナナハンを乗り回し、トロンボーンを吹き、キリンビアマイスターの資格をもつ。二十代の頃、高校教師を辞めて、急逝した父親の跡を継いだのだという。



久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。